くそったれのジャクソン

気にするなジョニージョニージョニー、行けよジョニー。

中野とラノベと無限ループ

 先週、用事で久々に都心に行った。新宿に行った。

 ついでに中野の駅前に寄った。大学のときにこの辺りに住んでた。

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 当時、中野は再開発がされてた。道や公園が整備されたり新しい建物ができたりしてた。

 

 中野セントラルパーク、ってトコの付近もそんな感じで、よく夜中、そこの辺りをぐるぐると散歩してた。同じトコを何度もぐるぐると、適当に音楽を聴きながらだらだら歩き続けてた。

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 要するに暇だった。バイトもしてねぇサークルも入ってねぇ、知り合いもいねぇカノジョもいねぇ、金もないからどっか他の場所にも行けねぇ、みたいな感じで、ただ時間だけがあって、結果として手近な公園の近くを、1周1キロぐらいか、真夜中の静かなそこを延々と馬鹿みたく回り続けてた。そういう19歳で、20歳で、21歳で22歳だった。

 

 大学も暇だった。僕がいたのは早稲田の文化構想学部っていう、まぁ文学部のパチモンみたいな学部で、基本だいたいの授業はユルくて、今はどうか知らんけどその頃は出席もそんな厳しくなくて、期末レポートを2000字かそこら書けばそれで単位がもらえて、だからまぁ全然忙しくなかった。7月とか1月、期末に大学の図書館に行くと他の学部のヒトがたくさんいてノートを広げてテスト勉強したりしてて、で、僕は適当にレポートのネタになる本を適当に1冊か2冊借りて、そのままちんたらとアパートに帰って、みたいな、まぁそんな感じだった。要するにうんこだった。ちんけな馬鹿学生だった。

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 要するに大学の4年間で何をしてたかっていうと散歩だった。同じ場所を徘徊老人のごとく回り続けてた。いや同じトコを歩いてるだけなら徘徊でさえないか? たまには足を延ばして違う道を、みたいなことも全然なかった。まったくフロンティアスピリッツがなかった。同じ風景を見続けてた。夜中の3時に歩き出して、気がつくと5時とかになってて、空の端に朝焼けが見え始めてて、それはまぁ少し綺麗かな、みたいな感じで、けどだからどうだってこともなくて、疲れたんでアパートに帰って、寝て、みたいなふうにして、それで気づくと4年が過ぎてた。大学を卒業してた。

 

 あとはラノベだった。ラノベを書いて新人賞に送ってた。そんで落ちまくってた。それを繰り返してた。100回、とは言わないけど、まぁ落ちまくってた。

 落ちるたびへこんではいたけど、でも、ある意味というか、もっとメタな感情としては落ちることに慣れ切って、どうでも良くなってた。惰性で送り続けてた。特に何がどう、何が変わるってわけでもなく、同じように書いて同じように送って同じように落ち続けてた。全部陳腐だった。一言一句ちんけな文章だった。

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 要するにループしてた。ラノベと真夜中の散歩が。それで全部だった。それだけが回ってた。惰性で、慣性でやってるってだけだった。止まるのがめんどいからとりあえず歩いとけ、みたいな。考えるのもめんどいからとりあえず考えたふりしとけ、みたいな。

 

 そういう毎日が、そういう自分がくそだな、みたいなことはまぁもちろん思ってはいて、つまりこんな無意味な散歩すんならTOEICとかなんとかの勉強したらいいんじゃねぇの、とか、早く新人賞獲ってさっさとデビューして印税欲しい、とかなんとか、要はこんな日々は惨めだ、こんな自分は認められねぇ、みたいに思ってはいたけど、でも多分、もっとメタな感情では、これでいい、このままだらだらいきたい、このままこの無意味さに浸ってたい、そういう感傷を転がしていたい、ずっとこうしてゼロを描く循環、無限ループの中で適当にたそがれたふりをしてられればいい、――みたいに思ってて、だからそれはそれでそれなりに幸せだった。甘ったれた、すこやかなモラトリアムだった。

 そんなことを思い出してた。

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 大学を出る1ヵ月前、地元の町役場から内定が来た。そういうわけで東京を、中野を離れることが決まった。そういうわけで中野セントラルパークを回り続ける、真夜中の散歩、その無限ループが終わった。

 大学を出る1ヵ月前、出版社から連絡が来た。応募したラノベ、とりあえず賞をやると。とりあえず本にすると。そういうわけで延々ラノベを書いて送り続ける、そんで落ち続ける、その無限ループが終わった。

 

 3月、引っ越しの準備をして、編集者と顔合わせ、打ち合わせをして、そんで、卒業式が終わって、3月30日、青森に帰った。ふたつのループが終わった。

 

 で、その年の秋、出したラノベは爆死して、それで終わった。そんで、それからしばらくして、役場を辞めた。つまりふたつとも終わった。無限ループを終わらせたそのふたつもまた終わっていった。ろくに始まらないまま。始めないまま終わらせてしまった。

 

 それからもう何年も経った。終わったその先で、まぁだらだら生きてた。というか生きてる。今も。

 特に何がある、何を始めたってわけでもなく、だからってあの頃の無限ループ、みたいな感じでもいまいちなくて、ある意味無限ループにすらなれなくて、そういう意味じゃあの頃よりもどうしようもない、無意味な時間で、でもまぁそんなヤツは多分どこにでもいて、別にこの自分だけじゃなくて、なら何を思おうと、何がどうであっても別に関係なくて、まぁどうでもいいわ、みたいな。何があっても別にあったことにならない、何を考えても別に考えたことにならない、自分以外にはどうでもいいことでしかなくて、なら別に、自分にとってもどうでもいいわ、みたいな。まぁそれはそれで一種の安らぎで、ならもう別に、ループしようがしまいが関係ねぇよ、言葉の違いでしかねぇよ、みたいな。

 

 まぁそんなもんだよな、みたいな。